木曜荘

ものかきの日記

「楠」と木曜荘

4月に読んだ本は、尾崎放哉句集のみ。「入庵雑記」という随筆がまたよかった。放哉の井泉水を慕う気持ちもよくわかるし、いろいろと共感できるものが多かった。昨夜もすこし読み返した。

ほかは再読ばかり、明石海人や前田鐵之助、石垣りんなど。書いているうち、読書からは自然と離れてしまうので、「欅」が手をはなれればまたすこしずつ読んでいきたいと思っている。

 

 

「楠」について

 

いままで、知り合いの方を中心に何冊か売れた。そのため、あとになって価格を下げたくなったけれど、1000円で買っていただいた方がいるわけだし、いまさら下げられないよな、と悩んでいたけど、「欅」がそろそろ完成するので、解決策が見つかった。

「楠」は500円まで下げて、すこしでもお買い求めやすくした。そのうえで、1000円ですでにご購入いただいた方々には、「欅」を寄贈させていただこうと決めた。寄贈と言えるのか、押しつけなんじゃないの、と思いつつも。でも住所やお名前を知られたくない方もいるかもしれないし、うまくいくかどうかわからない部分もあるけど。このためにご不快なきもちになられる方がもしいましたら、ごめんなさい。

 

と、これで原価ぎりぎり回収から、原価割れになったわけだけれど、それでも書斎に積まれているままよりはいいだろうと思う。そもそもつくる時点で、金銭的な利益なんて考えてなかった。それ以上のものを収穫したと思っている。

考え方が変わってきている。拙い作品ではあるけれど、ひとりでも多くの人に読んでいただけたらいいな、と。前はそうでもなかった。形にしたことがすべてで、そこから先(頒布や感想)はおまけのさいわいだと。そもそも売れるような文章ではないし、売るために書いたものでもないので、そういう考えも自然だとは思うけれど、いまはなんだろう、読んでほしいという思いが膨らんでいる。そして感想なども聞けたら最高かなと。たぶん、糧にしようとしているんだと思う。次の作品への。そういう視野の変化が、価格にまで影響したものかもしれない。

あとは興味を持ってもらえるように、宣伝などしていかなくてはとも思うけれど、これに関してはあいかわらず腰が重い。小売業にながくいた反動だと自分では勝手に決めているけれど、どうなんだろう、よくわからない。商品として扱いたくないのかも、でもだとしたら、価格を設定してBOOTHに出してってことも同じじゃないの、と思うけれど、なんかそこに一線があるんだよなぁ…。まぁおいおい、解決していけたらいいな。

短編集「楠」 | 木曜荘 https://booth.pm/ja/items/2646195

 

 

木曜荘

 

名前の由来は酒井徳男の水曜荘から。酒井さんについては「趣味馬鹿半代記」程度の知識しかないけど、その生き様にしびれるように憧れている。ので、水曜の次だから木曜だな、木にはいろいろとゆかりもあるし、とかなんとかいうノリで名付けた。

命名はノリだけど、かなり大切に思っている。ぼくは中卒なので、大学のサークルというようなものを知らない。だからその活動の実態も知らないし、想像すらできない。でも、それこそ尾崎放哉と「層雲」じゃないけれど、そういう集団でなにかをなすという世界があるというのをうすぼんやりと知っていて、昔から憧れていたのは確かだ。

自分は集まりの中心にいたくない人間で、すみっこでにこにこ眺めているのが好きなのだけれど、そういう集まりのどこにも見当たらないので、仕方ないからつくるか、となっている。いわゆる「アンソロジー」をつくるための一時的な寄り合いではなく、といって雑誌創刊なんて無理だし、もっとゆるいものになると思うけれど、それでも木曜荘名義(?)で本を一冊つくることは、やはり叶えたい夢のひとつだ。

…簡潔に言うと、自分の好きな作家の作品と、自分の作品とを一冊に綴じたい、だけなんだけど。そのための容れ物としての木曜荘というか、なんか、そんな感じ。

これもまた、「欅」ができあがったら、すこしづつ進めていきたいな。参加してくれる方がいればいいけれど…。