木曜荘

ものかきの日記

2022/09/22

不安定な空。晴れてみたり、降ってみたり、寒いような、暑いような、一日。たしかに秋の一日。

ひねもすひたすら植木を刈っていた。チャボヒバ、マキ、ベニカナメ、キャラボク、ツゲ、モチ…。明日一日で残りの黒松が終われば、今年の個人的な「結」はおわり。結は、簡単にいうと恩返しのためのお手伝いのこと。もちろん日当はもらうけれど、格別に安い。出れば出るほど損ということ。だから個人的な結。

帰って、久しぶりに読書椅子が空いていた(普段はねこが占領している)ので、寺田寅彦の随筆を読む。理系のばけものだなと思う。ものの見えかた、思考のすすめかたがまるでちがうように思われるので、ぼくは理系の人と話すのが大好き。

自分の立っている場所、それが不意に、不安定な崖のきわにでも立っているのではないかという、ぐらぐらとする錯覚をおぼえるのだ。自分の見ている(と信じている)世界には裏もある。ぼくはぼくの脳で見るある一面の世界をしか見れないけれど、話すことでその裏側を垣間見ることができる瞬間があるように思うのだった。それが快感なのだ。寅彦の随筆からも、そうしたぐらぐらする不安定感をおぼえる。

短いものが好きで、よく読む。場合によるけど、短ければ短いほどよいとさえ思う。『自画像』というすこし長めのものにはいったので、途中で飽きてこれを書いている。

止まっている原稿をふと思い出す。「元気にしているかな」と戯れに思う。久しく会わない旧友のような。近々会ってみようか、なんとなくそう思っている。

今日もできるだけ早く、できるだけ長く眠りたい。