木曜荘

ものかきの日記

蝶、蕾、仕事

昨日は結局仕事が終わるまで雨に降られた。泥をひっぱったりして余計な仕事が増えるのと、濡れて体が冷えるのとで、雨の日はいつもよりくたびれる。なんとかきれいに片づいてよかった。

現場を終えてごみ捨てに向かう車中で、先生からDMが届いた。詞華集に関するご助言をいただけた。相談したいことがたくさんあったので、うれしかった。そしてそのまま詞華集にお誘いした。最初に必ずお誘いしたいと思っていたのでよかった。ご快諾いただけたので、いよいよ本気で練っていこうと思っている。

 

「蝶」

モチイフは蝶。蝶は虫の世界の表現者のひとりだと思っている。芋虫毛虫時代の苦労をもじどおり糧にして、翅を得て、舞うように飛びまわり、花とともに生き、命をのこすことに専念するその姿は、創作者にかさなって見えるのだ。花や木や地面に集まる姿もまたいい。一冊の本に、個性豊かなおもいおもいの翅をもった蝶があつまる、そんなイメージ。

なのでぼくは蝶をモチイフになにか書けたらと思っているけど、ご参加くださる方々には自由に描いてほしいと思っている。無理に揃えることもないんじゃないかなと。ただテーマとして、それぞれの「今」を描いてもらえたらとは思う。英語に逃げるようだけど、言い換えるならその人その人の「リアル」が読みたい。といって、私小説的にというわけではなくて、…このへんのニュアンスが伝えづらいが、そんな感じ。

 

「蕾」

雑誌をつくるというのは数年前からの夢だけど、そのとき浮かんだ雑誌の名前は「蕾」で、「らい」と読んでもらおうかなという案があった。花が咲く寸前の蕾の美しさが好きで、なおかつ漢字にしたときに「雷」の文字がそこにあるのがたまらなく好きなのだ。本は読者がその手で開いたときに咲くのだと思っている。ぼくらがつくれるのは蕾までだ、という思いもそこにはこめられている。ついでにいえば、雷のように読者の体をかけめぐって痺れさせたいという思いもある。

けれど、そのへんはこれから変わっていくかもしれない。とりあえずはじめの一冊を詞華集としてつくってみて、そこからまた改めて考えるだろうから、いまはまだこのまま寝かせておこうと思っている。

 

仕事

「欅」にも書いたけれど、ぼくの仕事は、生涯書きつづけて本をつくり続けることだと思っている。生業として選んだ植木屋ももちろん一所懸命にやるし、日々学んだり励んだりしているわけだけれど、それは生活や製本のための「お金を稼ぐ仕事」であって、そこに一生を賭けるには値しない。だから植木屋としてのぼくは周りとの差が年々できてきている気がして、隠れ負けず嫌いのぼくはたまにそこに悔しさをおぼえたりもするけれど、やはりぼくの仕事は「こっち」なのだと思わずにはいられない。

書くこと、それを一冊に綴じること、これ以上の喜びをぼくは知らない。

それをぼくの好きな作家さんたちと一緒にできたらどうなるだろうというのがいまの最大の関心。そこに注力したい。まず容れものをしっかりつくる。あとお金を稼ぐ。それからお一人ずつ誘っていけたらと思っている。たのしみ。生きてる感じがする。