木曜荘

ものかきの日記

2022/07/08

今朝はなんとか目覚ましよりはやく蒲団から出られた。これだけで気持ちが全然ちがう。昨日は時間ぎりぎりまで起きることができず、一日を自責感からはじめることになったが、今日はちがう。このまま、一日を前向きにすごし、鬱を葬り去るつもりでいる。

お会いしたことはまだないけれど、もう数年、作品をとおしてやりとりしている歌手の飯田健二さんの新しいアルバムを聴いて涙するなどしたことが、心を軽くしてくれたようにも思う。台所にCDプレイヤーをもってきて、今も聴いている。飯田さんのやさしい歌声、奏でる音色、そしてすばらしい歌詞は、どれも彼の苦しみから生まれてきているもののように思うのだ。だってどれもこんなにも優しい。心に沁み入る歌というものはあるようでなかなかない。ありがたいことだと思う。

人間は水の入った袋だという表現があるけれど、ぼくがそれを感じるのは、自分にあった音楽を聴くときだ。音の波が、ぼくの体に波を起こして、それが普段は顧みることもない体のすみのほうまで届くのだ。この波紋のここちよさ、自分の体の深さを自覚する快さ。これは音楽でしか得られないとさえ思う。

 

こころをニュートラルに置くと、鬱にひっぱられる。それが症状というもので、一度引っ張られてしまえば、ずるずると滑り落ちていく。だから今日は一日、こころをニュートラルに置かない。それはとても疲れることだけれど、そうすることで侵入を防げるかもしれない。とにかく前向きに、よいことだけ考えていたい。

蒲団からえいっととびだしたことですでにニュートラルではないので、このままでいく。ちょっとした時間のすきまなどに、すぐ侵入しようといまも狙っているやつがいることを忘れないように、慎重に。ため息が出そうになったら、あるいは気づかずこぼしてしまったときは、すぐに深呼吸に切り替える。下は向かない、上を向いて息を吐く。ちょっとの差で一日が変わる。それらはもう経験済み。

仕事のうえでも、執筆のうえでも、いま鬱にとらわれているような暇はない。なんとか切り抜けてやる。仕事を丁寧にすみやかに終わらせて、ゆっくり休む時間をとろう。好きな音楽を聴いて、好きな本を読もう。いまの自分に必要なのはそういう時間だ。

 

大丈夫。大丈夫。長引かせない、今日で決着だ、とこころに繰り返す。今日は一日、自分を決して否定するな。させるな。ぼくはぼくのものだ。何にも渡すな。

いつもこうやって戦ってきたし、いつも生き延びることに成功してきた、だから大丈夫。こういうときこそ、笑え。最初は不自然なつくりものだっていい、そのうちに本当に笑えるから。乗っ取られるなよ、自分で舵をとるのだぞ、自分。はい。よし。