木曜荘

ものかきの日記

2022/07/24

如何ともし難いと思われるような眠気のなかから、なんとか身をおしあげることができたのは、散髪の予約をしていたからだった。五時に起きてまた眠り、九時の約束になんとか間に合い、散髪してもらった。

それから佐倉の城址公園まで足をのばした。

定期的に、森林や野原のある景色の中に身を置きたくなるのだ。見渡す限り、人の生息する証のまったく見えないような場所に。

最寄りの沿線で、疲れない範囲で、かつ満足できるだけの環境を、と求めると佐倉あたりがちょうどよく、失礼かもしれないがたいして人気もないようなので、人がごった返すということもない、けれど最低限の設備もあるので、熱中症にもならずに済んだ。

公園である以上、園路はあるし、人もいる。しかしそれでも充分にぼくのそうした疲れを取り除いてはくれていると信じている。結局、本当の森、本当の野原には、こんな気軽には行かれないのだから、それで仕方ないとも言える。こういうときに、よく使われる「自然」という言葉の、身勝手な使い方を思うとなんだか可笑しかった。

 

汗をだらだらと垂らしながら、樹木たちのあいだに身をおいて彼らの呼吸を感じ、鷺や鶯、蝉や蟇蛙の声を聞き、土のにおいを嗅ぐ。

かつて城があった、その後には兵たちの屯所となった、そしていまはもうなにもない。人の営為の卑小さ、自然のおおいなるわがままさを感じてすこしだけ笑えた。

人が去り、建物が朽ちても、樹はまだそこに立っている。ぼくはそういうものを書きたいのかもしれない、などと思ったが、どうだろうか。

 

来週からは久しぶりに手伝い現場、3週間ほど続く。

火曜か水曜には『欅』が仕上がって送られてくるらしい。やっと終わった、と感じる。手にとってみたい。そのときぼくは何を感じるのだろうか。ちょっと想像がつかない。