木曜荘

ものかきの日記

2023/01/11

今日も寒かった。地下足袋のなかで冷え切ったつま先を、枝のあいだに挟んで登り、剪定を続けるのは苦痛だった。でも楽しくもあるのが不思議だ。きっと四季は移ろうからだろう。寒いのはいまだけ、暑いのもまたおなじ。

現場は東雲の団地。いま植木屋の業界では、剪定の仕方がおおきく変わっている、過渡期にはいっている。これまでは樹木の外冠をまるく仕上げるのが定石だった。ふんわり、まあるく。それはある意味で「不自然な」美観だった。それがこの頃では「自然風樹形」というものが流行っていて、剪定の仕方がまるで変わった。長くやってきた職人ほど、この変化に面食らっているようだ。

外冠のまるみは重要視されなくなった。今まであたりまえのようにやってきた作業を封じ込められてもどかしい思いで木から降りてくる。いままでのとおりにやればもっと「綺麗に」なるのになぁ、と皆が異口同音につぶやくが、その綺麗の基準がかわってしまったのだから仕方ない。順応していかなくてはいけない。

ひとりで庭でやっているときも、この手の剪定を好むお客さんがいたので、ぼくにはそれほど縁遠い技術とも思われないので、皆よりはすこし前向きにとらえているかもしれない。とはいえ、十年間その技術の習得に励んできたものが、根底からひっくり返されるのはやはり…なんというか…悔しいような、もったいないような、不服なような、よくわからない感情が混ざっている。が、あたらしい技術が増えるのだと思えば、それはむしろ歓迎するべきものでもあるだろうと思うようにしている。

今日もこれから勉強。日曜には原稿に向かう予定なので、それまではなんとか頑張って勉強を続けようと思う。