木曜荘

ものかきの日記

2023/01/05

別に花の見頃でなくたっていい。ただ樹木に囲まれたいときがある。そういうときにぼくが行くのは千葉の佐倉城址公園。電車で一本。読んでいた本から顔をあげると、ビルやマンションはいつのまにか消え去って、田圃と山が目に映る。その瞬間が好きなのだ。

品種は忘れたが、桜がひとつ。しずかに咲いていた。

夏に来たときに食べて以来、また食べたくて仕方なかった「歴博ドック」を堪能した。なんだか異様にうまいのだ。歴博のほうは今日もスルー。特に興味もわかなかったので、食べてまたすぐ樹々のなかへ。

頬に触れそうになった椎の葉をなんとなく見てみたら、幹がとんでもなく遠くにあって驚いた。方杖もなしにここまで伸びるものなのかと笑った。自然というものはやはり真似することさえできないのではないだろうか。言葉もでない。写真でも伝わらないだろうことはわかっていたが、いちおう撮っておいた。自分のために。

電車で人混みのなかへ帰ってくる。どっと疲れが出るが、こころはすこし軽い。いつも見ている街路樹がひどくちいさく見える。ぼくの住む家が木でできていることをすこし嬉しくおもいながら扉をあけておおきな声で「ただいま」ととなえた。